| ● | 推理小説について |
| 作家名:坂口安吾
随筆。 横溝正史の「蝶々殺人事件」をメインテクストに、角田喜久雄、小栗虫太郎、木々 高太郎、などを俎上に上げ、日本の推理小説について少しばかり苦言を呈する内容。 ドストエフスキーなども引き合いに出されてる。日本の探偵小説は衒学すぎるところがある。ヴァン・ダインの悪影響かと思うが、死んだ小栗虫太郎氏などゝなると、探偵小説本来の素材が貧困で、それを衒学でごまかす、こういう衒学は知性のあべこべのもので、実際は文化的貧困を表明しているものなのである。世間一般にあることだが、独学者に限って語学の知識をひけらかしたがるが、語学などは全然学問でも知識でもなく、語学を通して読まれたテキストの内容だけが学問なのだが、一般に探偵小説界は、まだ知識の語学時代に見うけられる。 法医学上のことなども、衒学的にふりかざゝれており、別にそうまで専門的なことを書く必要もないところで法医学知識をふりまわす。そのくせ重大なところで、実は法医学上の無智をバクロするというような欠点もある。 初出:「東京新聞 第一七八一号、一七八二号」 1947(昭和22)年8月25日、26日 底本:「坂口安吾全集 05」筑摩書房 1998(平成10)年6月20日初版第1刷発行 (2008/06/07(Sat) 20:24)
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| ● | 修禪寺物語 |
| 作家名:岡本綺堂
旧字旧仮名版。 内容は新字新仮名版と同一。
綺堂が修善寺に遊んだ折り、修禅寺に伝わる寺宝「頼朝の面」という奇妙な木彫の面を見て着想したという、鎌倉時代を描いた戯曲。
源頼家は征夷大将軍・源頼朝の嫡男。 父の急逝により、若くして二代将軍となった彼は妻・若狭の実家である比企家を後ろ盾としていた。 しかし母・北条政子とその一族である北条氏は、頼家の独断的な政治手法を嫌い、病を得た彼を廃して弟である実朝を三代将軍に立てようと画策。 外戚間に対立が起きた。 比企と北条の対立は、比企能員が北条方に謀殺されたこと(比企能員の変)により収束。 頼家は鎌倉から追われ、伊豆に流された。 これが1203年迄の出来事。 「修禅寺物語」は翌1204年を時代背景としている。
初出:「文芸倶楽部」 1911(明治44)年1月 底本:「日本現代文學全集34 岡本綺堂・小山内薫・眞山青果集」講談社 1968(昭和43)年6月19日発行 (2008/06/07(Sat) 20:16)
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| ● | 修禅寺物語 |
| 作家名:岡本綺堂
新字新仮名版。 内容は旧字旧仮名版と同一。
綺堂が修善寺に遊んだ折り、修禅寺に伝わる寺宝「頼朝の面」という奇妙な木彫の面を見て着想したという、鎌倉時代を描いた戯曲。
元久元年七月十八日(1204年8月14日)。 能面師・夜叉王は、二人の娘「かつら」「かえで」、弟子の晴彦の四人で、伊豆・修善寺に暮らしている。 長女のかつらは、都生まれの亡き母親に似たか、公家気質で気位が高く、高貴な身分の男性と結婚を望み、二十歳の歳になった今でも独身でいる。 十八歳の次女かえでは、父親似の職人気質で、父の弟子である晴彦を夫に迎えていた。 夜叉王は伊豆に流された頼家から、彼の顔を写した能面を作るように依頼されていたが、半年を過ぎても納品できずにいた。 その日、痺れをきらした頼家が、自ら夜叉王の工房へ催促にやってきた。 気性の激しい頼家は、まだ納得行く作品ができぬという夜叉王に斬り掛かる。 慌てた晴彦ができあがっていた面を持ってくる。 頼家はその出来を褒めたが、夜叉王は納得していない。 生きた人を写した面に「死相」が浮かんでいると言うのだ。 しかし面を気に入ったという頼家。かつらは面を箱に収め献上する。 かつらの美しさをみとめた頼家は、かつらに奉公に上がるよう命ずる。 かつらは自らの望みかなったと喜び、面を携えて家を出て行く。 修禅寺に戻った頼家は、かつらに亡き妻の名である若狭を名乗らせた。 一時、心安らぐ頼家主従。 しかしその夜、北条方が修禅寺を襲撃した。 俄に聞こえる騒乱の物音に、かつらの身を案じる夜叉王一家。 夜陰から現れた落ち武者をかえで・晴彦夫婦が助け起こすと、それは男装したかつらだった。 父の打った面を被り頼家の衣裳を身につけたかつらは、自ら頼家と名乗りを上げることにより、我が身に敵を引きつけ頼家を逃がそうと務め、深手を負ったのだった。 しかし、寺より避難してきた僧侶から、すでに頼家も討たれたと聞かされ、かつらは力を失う。 かつらが身につけ、敵の返り血を浴びた頼家の面を手にした夜叉王は、今事切れようとする娘を前に歓喜し、笑う。
「幾たび打ち直してもこの面に、死相のありありと見えたるは、われ拙きにあらず。鈍きにあらず。源氏の将軍頼家卿がかく相成るべき御運とは、今という今、はじめて覚った。神ならでは知ろしめされぬ人の運命、まずわが作にあらわれしは、自然の感応、自然の妙、技芸神に入るとはこのことよ。伊豆の夜叉王、われながらあっぱれ天下一じゃのう。」
死に行くかつらもまた笑う。
「わたしもあっぱれお局様じゃ。死んでも思いおくことない。ちっとも早う上様のおあとを慕うて、冥土のおん供……。」
娘の苦しげな顔を見た夜叉王は、弟子に筆と紙を取りに行かせ、若い娘の断末魔を「後の手本」に写生するのだった。
初出:「文芸倶楽部」 1911(明治44)年1月 底本:「日本の文学 77 名作集(一)」中央公論社 1970(昭和45)年7月5日初版発行 (2008/06/07(Sat) 20:13)
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| ● | 探偵小説を書くときの二十則 |
| 作家名:S・S・ヴァン=ダイン 翻訳者:SOGO_e-text_library
S・S・ヴァン=ダイン(S. S. Van Dine)、本名・ウィラード・ハンティントン・ライト(Willard Huntington Wright)は、20世紀初頭アメリカの美術評論家・推理小説作家。(1888年10月15日 - 1939年4月11日) 探偵小説家としての代表作は僧正殺人事件、グリーン家殺人事件といった、素人名探偵ファイロ・ヴァンスが活躍するシリーズなど。
本稿は、彼が自らの創作のための決意もかねて、アンソロジー『世界短編傑作集』序文に「推理小説を書く上での鉄則」として記したもの。日本では「ヴァン・ダインの二十則」とも呼ばれている。 なお、『二十則』や、ノックス師による『十戒』といったセオリーは、必ずしも守らなければならないと言うモノではない。 守られていない作品や、これを逆手に取り、あえて破ることによって成功した名作も多々ある。
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| ● | 現今の少女小説について |
| 作家名:宮本 百合子
習作。 完成原稿ではないので、改行の位置などの乱れ誤字と思われる記述などが散見される。 宮本 百合子(1899年2月13日 - 1951年1月21日)は昭和期の小説家(プロレタリア文学)、評論家。 このテクストは、底本解題の著者・大森寿恵子(宮本百合子の元秘書)によれば、1914(大正3)年4月24日執筆と推定されるとのこと。 とすれば、文壇デビュー(1916年、当時17歳)前、15歳の文章ということになる。 世の中にありあまるほどいらっしゃる少女小説の作者に申します。 失礼な申し分かも知れませんが若い娘共に只悲し味と云うものばかりほか注ぎ込んで下さらないのなら、どうぞ筆をお持ちになることをやめて下さいまし。 若しつくそうと思って居て下さる方々へはどうぞ価値のある力強い、美術的な又芸術的な、一つの或る馬鹿に出来ないものである少女小説をお出し下さい。 私は今の少女小説は、悲しみの毒虫と云います。 |
| ● | 桜の樹の下には(新字旧仮名) |
| 作家名:梶井基次郎
内容は桜の樹の下には(新字新仮名)と同一。
「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」 不安と狂気を胸に抱き、精神的に不安定になっている男が、友人に語る一人称の形を取った掌編。 かげろうの死骸が浮かぶ水たまりから、美しいと感じられるもと表裏一体に無数の死があると見た彼は、魂の解放を感じて狂喜する。 俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があつて、はじめて俺の心象は明確になつて来る。 男の歓喜を聞き、友人は冷や汗を流して恐怖するのだった。 初出: 「詩と詩論 第二冊」1928(昭和3)年12月 底本: 現代日本文學大系 63 梶井基次郎・外村繁・中島敦集 出版社: 筑摩書房
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| ● | 桜の樹の下には(新字新仮名) |
| 作家名:梶井基次郎
旧仮名遣(正仮名遣)で発表された作品の表記を現代仮名遣に改めたもの。 内容は桜の樹の下には(新字旧仮名)と同一。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」 不安と狂気を胸に抱き、精神的に不安定になっている男が、友人に語る一人称の形を取った掌編。 かげろうの死骸が浮かぶ水たまりから、美しいと感じられるもと表裏一体に無数の死があると見た彼は、魂の解放を感じて狂喜する。 俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて俺の心象は明確になって来る。 男の歓喜を聞き、友人は冷や汗を流して恐怖するのだった。 初出: 「詩と詩論 第二冊」1928(昭和3)年12月 底本: 檸檬・ある心の風景 出版社: 旺文社文庫、旺文社
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| ● | アイヌ神謡集 |
| 作家名: 知里幸惠(編・訳)
アイヌ民族に伝わる「カムイユカラ(神の叙事詩・神謡)」。 カムイユカラは「カムイ(神々)が自ら語る形式のユカラ(ユーカラ 謡・叙事詩)」で、神(自然)とアイヌ(人間)の関係を表す物語・教訓などがうたわれている。
編者であり訳者の知里幸恵は、ユーカラクル(ユカラの語り部)であった祖母・金成モナシノウクが謡い、母方の叔母・金城マツがローマ字で書き留めたユカラ(アイヌ叙事詩)を、大和言葉に翻訳し、言語学者・金田一京助の助言と協力によって脱稿。 出版を目前にしていた1922年9月18日に心臓麻痺で急逝。享年19。 文字を持たないアイヌ語は、歌と語りでその歴史を綴る。 明治以降、北海道が急速に開発され、アイヌが大和民族に飲み込まれてゆく過程で、語り部達はその数を減らしていった。 知里幸恵は祖母と叔母の影響でアイヌ語が堪能であり、失われてゆく自らのアイデンテティ(北海道の自然、アイヌの文化)を守りたいという強い願いから、命を削ってこの神謡集を著したといえる。 |
| ● | 文芸的な、余りに文芸的な |
| 作家名:芥川龍之介
芥川による文学評論。 四十章からなり、二章と二十九章に、同時代の作家で友人でもあった谷崎潤一郎とのとの「小説の筋の芸術性」をめぐる論争を含む。 第一章【「話」らしい話のない小説】で『僕は「話」らしい話のない小説を最上のものとは思つてゐない。従つて「話」らしい話のない小説ばかり書けとも言はない。』と始まり、四十章【文芸上の極北】を『文芸の極北はハイネの言つたやうに古代の石人と変りはない。たとひ微笑は含んでゐても、いつも唯冷然として静かである。』と結ぶ。 三十八章では「通俗小説(大衆文学)」と「芸術小説(純文学)」について短く論じる。 曰く 『 所謂(いはゆる)通俗小説とは詩的性格を持つた人々の生活を比較的に俗に書いたものであり、所謂芸術小説とは必しも詩的性格を持つてゐない人々の生活を比較的詩的に書いたものである。』 『(「所謂通俗小説論はポピユラア・ノヴエルには通用しない。」と前置きし)ベンネツト(Arnold Bennett)は彼のポピユラア・ノヴエルに Fantasies の名を与へてゐる。それは事実上あり得ない世界を読者の為に広げて見せるからであらう。』 続編の続文芸的な、余りに文芸的なには「昭和二年五月六日」の日付がある。 初出:雑誌「改造」1927年(昭和2年)2月号〜8月号 |
| ● | 続文芸的な、余りに文芸的な |
| 作家名:芥川龍之介
芥川による文学評論。タイトル通り、「文芸的な、余りに文芸的」の続き。 「昭和二年五月六日」の日付がある。 十章からなるが、各章とも全体的に短い文章で書かれている。 七章【語彙】では、昔と今とで言葉の意味に変化があることを上げ『僕等の語彙はこの通り可也混乱を生じてゐる。』とし、『従つてこの混乱を救ふ為には、――一人残らず間違つてしまへ。』と締めている。 |
| ● | 幸福の王子 |
| 原題:The Happy Prince 著者名:オスカー・フィンガル・オフレアティ・ウィルズ・ワイルド(Oscar Fingal O’Flaherty Wills Wilde) 訳者名:結城浩
1888年に発表された、オスカー・ワイルドの児童向け短編。 全身を金箔で覆われた王子の像。両の目はサファイア、剣の柄にはルビーがはめ込まれ、鉛の心臓を持っていた。 町の人々は美しい王子の像を自慢に思っていた。 ある晩、仲間から離れてしまった(川岸に生えた葦に恋をして旅立つのが6週間もおくれた)燕が町にやってくる。 一夜の宿を探し、王子の足下にたどり着いた燕が眠ろうとすると、大きな水滴が落ちてくる。 見上げると王子の像のサファイアの瞳から涙があふれ出ている。 生前、美しい物だけに囲まれて幸せに生き幸せに死んだ王子は、像となって柱の上に立たされてから、初めて醜悪な物や悲しいことを目にした。 そのことを嘆き悲しむが、像である身ではその場を動くことができない。 病に苦しむ男の子の母親に剣のルビーを渡して欲しいと頼む王子の願いを、燕ははじめ断ったが、王子の熱心さに根負けし、ルビーを咥えて飛び立つ。「妙なことに」とツバメは言いました。 「こんなに寒いのに、僕は今とても温かい気持ちがするんです」 次の晩、南に向かおうとする燕に、王子はまた頼み事をする。 燕は王子の頼みを断り切れず、サファイアの瞳を一つ売れない脚本家に届け、次の晩にはもう一つをマッチ売りの少女に届けることに。 燕は目を失って物が見えなくなった王子の元に留まることをきめる。 王子は燕に自分の身を覆っている純金の箔を貧しい人々に与えるように頼んだ。 箔が剥がれ、みすぼらしい姿となった王子。寒さのために力尽きた燕。 王子の像は溶鉱炉で解かされたが、鉛の心臓は溶けずに残り、ゴミとして捨てられた。燕の亡骸もまたゴミとされた。 その頃、神が御使いの一人に「この町でもっとも尊い物を二つ」持ってくるように命ぜられた。 御使いはゴミ箱の鉛の心臓と燕の死体を御前に持って行った。 王子と燕は御国で永遠の幸福を得たのだった。
有島武郎版の「燕と王子」と読み比べてみるのもまた一興。 |
| ● | はだかの王さま |
| 作家名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 翻訳者名:大久保ゆう
原題「The Emperor's New Suit(直訳:陛下の新しい服)」 王様が好きなのは着飾ること。 それも一時間ごとに服を着がえて、見せびらかし、皆にうらやましがられるのが何より好き。 ある日ご城下に詐欺師が二人現れた。 自分たちを布織り職人で、世界でいちばんの布が作れると称して、曰く 「自分にふさわしくない仕事をしている人と、バカな人にはとうめいで見えない布なのです。」 これを聞きつけた王様、早速二人を召し出して、件の布を織らせることに。 王様からたくさんのお金をせしめた詐欺師達は早速布を織り始めました。 ところがというか当然というか、織られているはずの布は、大臣にも家来にも、王様にも見えなかった……。
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| ● | 赤いくつ |
| 作家名:ハンス・クリスティアン・アンデルセン 翻訳者名:楠山正雄
木靴を履いた貧しい娘カレンが、いつも足の甲を赤く腫らしているのをいじらしく思った村の靴屋の奥さんは、赤い羅紗布の古切れで小さな靴を作って贈った。 みすぼらしい靴だったがこれより他に履く物のないカレンは、母親の葬式にもこの靴を履いていた。 裕福な老婦人が彼女を引き取ってくれたが、みすぼらしい赤い靴は捨てられてしまった。 ある日、美しい王女が赤い靴を履いているのを見たカレンは、心を奪われる。 堅信礼(キリスト教で信仰告白をする儀式。カトリックの場合、一部地域では成人式のような扱いとなる)の衣裳を誂えたカレンは、老婦人に連れられて靴屋へ。 ガラス張りの棚には王女が履いていたのとそっくりな靴があった。 目の悪い老婦人はそれが真っ赤な色であると気付かずに、カレンに買い与える。 カレンもそれが赤い色であるということをあえて口にしない。 堅信礼に望んだカレンだったが、儀式の間も説法の間も、赤い自分の靴のことばかり考えていた。 老婦人は周囲からあの靴が赤い色だと知らされて、初めて不作法に気付かされた。老婦人はカレンに、次に礼拝に行くときには古い黒い靴を履くようにと念を押す。 しかし古い靴と赤い靴を見比べたカレンは、その日も赤い靴を選んでしまった……。
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| ● | 小熊秀雄全集-14 童話集 |
| 作家名: 小熊 秀雄 詩人・小熊秀雄が生涯に書いた全童話を収録。
トムは自分の財産を泥棒や乞食に分け与えてしまうのほどのお人好し。 ある嵐の晩、トムの家に嵐のために家来とはぐれてしまったという「南の国の姫」がやってきた。トムが親切に世話をすると、姫はトムのお嫁さんになった。 ところがこのお嫁さんがあまりに美しいので、トムは気が気ではない。畑仕事も上の空で手に付かない有様。 そこでお嫁さんは自画像を描いてこれを見ながら畑仕事をしなさいと、トムに渡す。 トムは絵を畑に飾って仕事に励む。ところが突然強い風が吹いて絵は飛ばされてしまった。 飛ばされた絵はお城の堀に。それを見た王様、余りの美しさにモデルを我が妃にと求め……。自画像 三人の若い騎士は、「この国でいちばん勇ましい騎士に(中略)可愛い王女をくれる」という王様のおふれ書きをを見て、王城まで旅をすることに。 旅の途中で無人の寺院に宿を取ることになった三人の前に、恐ろしげな娘が現れる。 二人の騎士は畏れたが、もう一人は勇気を持ってその女の正体を探ることに。 やがて娘は騎士を墓地に誘い、墓を掘らせた。 そして中からとりだした赤子の亡骸を、貪るように食べ始めた……。三人の騎士 ほか17編(計19編)の短編集。
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| ● | ボヘミアンスキャンダル |
| 原題:A Scandal in Bohemia 著者名:サー・アーサー・コナン・ドイル 訳者名:coderati
ホームズシリーズ最初の短編。 女嫌いのホームズ氏が、唯一敬意をもって「the woman(あの女)」と呼ぶアイリーン・アドラー女史(Irene Adler)が登場する一編。
民間諮問探偵シャーロック・ホームズの元に、覆面の紳士が依頼を持って訪れる。 依頼の内容は、さる高貴な人物のスキャンダルに関わる写真を「取り戻す」こと。 写真に写っているのは、皇太子時代のボヘミア王ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・シギスマンド・フォン・オルムシュタインと、当時の愛人アイリーン・アドラー嬢。 スカンジナヴィア王国第二王女クロチルド・ロスマン姫との婚約発表が近いボヘミア王にとっては、良縁の破談・国際問題となりかねない品だった。 期限は3日。 ホームズは失業中の馬丁に変装してアイリーンの身辺を探り、ゴドフリー・ノートンという弁護士が彼女に付いていることを突き止める。 アイリーンとゴドフリーの後を付けたホームズは、たどり着いた聖モニカ教会で、彼らの結婚式の立会人を務めることとなった。 その晩、浮浪者に変装したホームズは、ケンカ騒ぎに乗じてアイリーンの家への潜入。 ワトソンと示し合わせてニセの火事を起こし、目標物の在処を確認する。 作戦の成功を確信したホームズがベーカー街に戻ってくると、見知らぬ痩躯の青年が彼に挨拶をした……。
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| ● | ブタ飼い王子 |
| 著者名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 訳者名:宮城麻衣
貧しく小さな国に、立派な王子がいた。 彼は皇帝の姫に求婚するため、素晴らしいバラと小夜啼鳥を贈る。 造花の薔薇とオルゴールのナイチンゲールしか知らないらしい姫は、それらが「本物」であること知ると気味悪がって、贈り主に合うことを拒んだ。 自分の贈り物を認めて貰えなかった王子は一計を案じ、貧しい身なりに変装して宮殿へ行き、豚飼いとして雇い入れて貰う。 豚小屋で仕事をしながら、王子は不思議なだけれど何の役にも立たない玩具を作り出す。 それがどうしても欲しくなった姫に、豚飼いは姫に「100回のキス」を要求する。 どうしても玩具が欲しい姫は、泥まみれに汚れた豚飼いにキスをすることに。 ようやく86回目が済んだとき、その破廉恥な様子が皇帝に知れ、姫は豚飼い共々宮殿から追い出されてしまう。 国を追われるくらいなら、最初から小国の王子と結婚しておくのだった、と後悔する姫。 すると豚飼いは王子の正体を明かして曰く 「あなたはあのバラやナイチンゲールの価値も分からなかった。それなのにあなたは、あんなくだらないおもちゃのためにはブタ飼いにだってキスしようとする。その報いをいま受けるのです」 王子は自国の宮殿に戻ると姫の眼前で門を閉めきってしまうのだった。
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| ● | ボヘミアの醜聞 |
| 原題:A Scandal in Bohemia 著者名:サー・アーサー・コナン・ドイル 訳者名:大久保ゆう 初出・英国『ストランド』誌一八九一年八月号(1891年7月)
ホームズシリーズ最初の短編。 女嫌いのホームズ氏が、唯一敬意をもって「the woman(あの女)」と呼ぶアイリーン・アドラー女史(Irene Adler アイリーンは英語読み。ドイツ読みではイレーネ乃至はエレーナ)が登場する一編。
民間諮問探偵シャーロック・ホームズの元に、覆面の紳士が依頼を持って訪れる。 依頼の内容は、さる高貴な人物の醜聞に関わる写真を「取り戻す」こと。 写真に写っているのは、皇太子時代のボヘミア王ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモント・フォン・オルムシュタインと、当時の愛人アイリーン・アドラー嬢。 スカンディナヴィア王国第二王女クロティルド姫との婚約発表が近いボヘミア王にとっては、良縁の破談・国際問題となりかねない品だった。 期限は3日。 ホームズは失業中の馬丁に変装してアイリーンの身辺を探り、ゴドフリィ・ノートンという弁護士が彼女に付いていることを突き止める。 アイリーンとゴトフリィの後を付けたホームズは、たどり着いた聖モニカ教会で、彼らの結婚式の立会人を務めることとなった。 その晩、浮浪者に変装したホームズは、ケンカ騒ぎに乗じてアイリーンの家への潜入。 ワトソンと示し合わせてニセの火事を起こし、目標物の在処を確認する。 作戦の成功を確信したホームズがベーカー街に戻ってくると、見知らぬ痩躯の青年が彼に挨拶をした……。 |
| ● | おやゆび姫 |
| 作家名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 翻訳者:大久保ゆう
子供が無いことを悲しんだ女性が、銀貨12枚と引き替えに魔法使いから貰った一粒の大麦。 鉢に植えるとすぐに芽を出し、チューリップのような葉を出し、チューリップのような花を付ける。 開いた花の中には親指ほどの女の子が座っていた。 おやゆび姫と呼ばれることになった女の子は、女性に愛されて成長する。 しかしある晩、母ヒキガエルにさらわれてしまう。 おやゆび姫が蓮の葉の上で泣いていると、メダカが哀れんでハスの葉の茎を囓りきり、逃がしてくれる。 川を流されたおやゆび姫はコガネムシに捕らわれるが、他のコガネムシから醜いとののしられ、ヒナギクの花の上に捨てられてしまう。 冬になり、寒さに凍えるおやゆび姫は野ネズミの婆さんに助けられる。 野ネズミと隣人のモグラの住処の間のトンネルに、凍えた燕が倒れていた。おやゆび姫は燕を介抱する。 やがてモグラがおやゆび姫を妻にしたいと申し出た……。
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| ● | アッシェンプッテル ―灰かぶり姫のものがたり― |
| 作家名:グリム兄弟 翻訳者:大久保ゆう 挿絵:アドリアン・ルートヴィヒ・リヒター
いわゆる「シンデレラ」の物語。 継母と義理の姉達に虐げられていた「灰かぶり」。 舞踏会に行けず、ハシバミの木の下で悲しみにくれていると、鳥たちがやってきて、ドレスや絹の靴を落としていった。 それを身につけて舞踏会に出かけたアッシェンプッテルを王子が見初める。 王子は名前や家を尋ねるがアッシェンプッテルは答えず、逃げるようにして家へ帰る。 翌日もハシバミの下で鳥がドレスを落とし、アッシェンプッテルは舞踏会へ出かける。 その翌日に鳥が落としていったのは前以上に美しいドレスと金の靴だった。 家へ戻る時間となり、慌ててかけだしたアッシェンプッテルは左の金の靴を落としてしまう。 王子はこの靴を手がかりに、姫を捜す。 二人の義理の姉は履けない靴に足の方を合わせようとして、指を切ったり、踵を削いだりするが、ニセモノとばれてしまう。 最後にアッシェンプッテルが靴を履き、本物と知れる。
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| ● | シンデレラ ―ガラスのくつのものがたり― |
| 作家名:アンドルー・ラング 翻訳者名:大久保ゆう 挿絵:ジョージ・クルックシャンク
ヴィクトリア時代の英国の作家・詩人・学者のアンドルー・ラングは世界中の童話や伝承民話を集め再編集。 いわゆる昔話や神話以外にもペローやグリムなどの著作からも蒐集されている。 本編もその中の一つ。 継母と義理の姉達に虐げられていた「灰かぶりひめ」。魔法使いの力を借りて舞踏会へ行き王子と出会うが、魔法の効力が切れる時間に追われて、ガラスの靴を置き忘れる。 王子は靴の持ち主を捜し回り、ようやくシンデレラを捜し出して妻に迎える。 原作(?)であるグリムのものと比べると、残酷表記が無くなっており、かなり優しい内容になっている。
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| ● | 大衆文芸作法 |
| 作家名:直木三十五
エンターテインメント文学の新人に与えられる文学賞「直木賞(直木三十五賞)」の名称の由来となった大衆文学作家による、大衆文学考。 「大衆文学の定義」「大衆文学の意義」「大衆文学の歴史」「文章に就いて」「時代小説」「科学小説」「探偵小説」「少年小説と家庭小説」「ユーモア小説」「愛欲小説」「結論」の11章からなる。 「文章に就いて」の章では芸術としての文学と通俗・大衆文学との表現の違いについて、東西の作家の文章を引用して解説。 曰く(前略) だから、芸術小説と大衆小説との分岐点は題材の如何にあるのでは無くて、寧ろその文章にあるのである。 (中略) そこで、大衆文芸の文章は? くだけて云うなら、難渋な文章を書いてはいけないのである。 (中略) 平易な文章というのは、自分の文章の特色を没却することを意味するのでは断じてない、ということである。(中略)よき文章家には、必ず隠そうとして隠し切れないであろう特色が、自らその文章に浮び出るものである。 (後略) |
| ● | 三つの指環(仮) |
| 作家名:芥川龍之介
芥川の未決定稿。 はじめに物語の筋とおぼしきものが書かれ、その後に書きかけのシナリオ形式のものが綴られている。
王位を継いだばかりの若い王は不可解な乞食に「害なす者があれば知らせてくれる」という指輪を渡される。 落魄した賢い娘は、乞食から「どのような男の心も捉える」という銀の指環を渡される。 市場で壺をひさぐ老爺は、乞食から「人の秘密も残らずわかる」という鉄の指輪を渡された。 さて、この三人と三つの指輪を巡る物語は……。 |
| ● | 怪談綺談 |
| 作家名:小酒井不木
お城の広間にあるシビル(ギリシア神話の予言の女神)の絵画を異様に畏れる令嬢。 発掘に関わった人々が次々に不幸に見舞われたという木乃伊(ミイラ)の行方。 70才の誕生日を迎えた詩人が聞いた不可思議な調べ。 奇妙な夢を見た夫人たちの話。 母に死なれた一人娘の狂乱を鎮めた何者かの存在。 あるヒステリー症状のある女性が見た幻の蜂。 旅行者が聞いた「予言」についての小話。 作者が「西洋の文献を探し」見つけた「いささか変ったところ」のある7つの掌編。 初出:「講談倶楽部」1928(昭和3)年3月号 |
| ● | 蓮花公主 |
| 作家名:蒲松齢 翻訳者名:田中貢太郎 ジャンル:中国の昔話
膠州の竇旭という男が昼寝の最中夢を見る。 褐色の衣服をまとった男が現れて曰く 「殿様から御招待にあがりました。」 案内された竇がたどり着いたのは、この世の物では無いと言うことが一目で分かる楼閣。 楼閣の王は竇に対句を作るように命じた。 できた詩を聴いた王は、その中に公主(姫)の名が織り込まれていることに感激し、竇にその姫「蓮花公主」と結婚することを勧めた。 ところが竇は現れた公主の美しさに見とれ、王からの言葉も聞かず、帰って恐縮して退席してしまった。 目を覚ますとまだ日が残っていた。 夢の中ではあるが姫と結婚し損ねたことを悔いた竇はもう一度寝て夢の続きを見ようとしたが、その日は見ることができなかった。 しかし別の夜、またしても夢の中に褐色の衣服をまとった男が現れて、彼は楼閣に上り、公主と婚礼を上げる。 すると楼閣に妖怪が迫っているとの急報が入る。 王は竇に公主の身を託す。竇は公主を抱きかかえて宮殿から逃げ出した。 竇はようやく己の家まで逃げおおせたが、公主は 「別に家を一つ建てて、父母や民を救ってくれ」 と懇願する。 貧しい竇にはそれができず、悲嘆に暮れるところで目が覚めた。 その枕元で何かが啼く声がして……
底本:「聊斎志異」明徳出版社 1997(平成9)年4月30日初版発行 底本の親本:「支那文学大観 第十二巻(聊斎志異)」支那文学大観刊行会 1926(大正15)年3月発行
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| ● | 虹の絵の具皿 (十力の金剛石) |
| 作家名:宮沢賢治 ジャンル:童話
玻璃(水晶ないしはガラス)の宮殿から内緒で抜け出した王子さま。 そっと駆け込むのは大臣の家。 大臣の息子は王子さまと同い年のお友達。 虹の脚もとにあるという『ルビーの絵の具皿』を探しに、王子さまと大臣の息子は霧の立ちこめる野原を駆け出した。 暗い森を抜け、藪を切り払って、濃い霧の中を進んでゆくと、そこは森にかこまれたきれいな草の丘。 空からぽつぽつ降る霰はダイアモンドやトパーズやサファイア。 竜胆の花は天河石(アマゾナイト)で葉は硅孔雀石(クリソコラ)、黄色い草の穂は猫睛石(キャッツアイ)、梅鉢草は蛋白石(オパール)、当薬の葉っぱは碧玉(ジャスパー)で蕾は紫水晶(アメシスト)、野薔薇の枝は琥珀と霰石(アラゴナイト)で真っ赤なルビーの実がなっている。
美しい花々は寂しげに歌う。 「十力(じゅうりき)の金剛石は今日も来ない」 花たちが言うには チカチカうるさく光ったりせず、きらめくときも、かすかに濁るときも、薄光りするときも、真っ暗なときもあり、春の風よりやわらかく、卵形に丸く、霧よりも小さいときもあれば空や大地を埋め尽くすときもあり、千の粒に分かれることもあれば、たちまち一つに集まり、堆肥の湿り気の中、草や木の体の内、子供の頬で輝くもの。 花々が待ち望むそれは、やがて漸く降り注いだ……。
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| ● | 死後の恋 |
| 作者:夢野久作 ジャンル:怪奇物(グロテスクな表現有り)
1918年、ロシア。 連合国のシベリア出兵により、諸国の兵隊達がウラジオストックに多数駐留していた頃のこと……。 一人の貧しい身なりをしたロシア人が、日本人将校に言った。 「私の運命を決定て下さい」 将校をレストランに引き込み、食事と酒を振る舞いながら、男は饒舌に語る。 己がモスクワ生まれで貴族の血を引いていること。白軍に参加していたこと。同郷で、リヤトニコフという十七、八歳の戦友がいたこと。共に王朝文化を愛していたこと。 命がけの連絡斥候として出発する直前、リヤトニコフに別れを告げようとしたこと。その時の彼から目もくらむような宝石類を見せられたこと。それは彼がロシア革命直前に両親から送られたモノであること。 彼は革命の嵐から逃れて白軍の中に身を潜めていたが、ある日両親同胞が処刑されたことを知ったと告げられたこと。その直前、司令部で廃帝ニコラス二世とその家族が銃殺されたという噂を聞いていたこと。 リヤトニコフの運命に驚愕しつつ、彼の持つ宝石が欲しくて堪らなくなったこと。そのために彼の死を願い、斥候の一団に引き入れたこと。 行軍中に赤軍から銃撃を受けて負傷したこと。行き別れになったリヤトニコフと彼の宝石を探して森をさまよったこと。 森の中で戦友達の惨殺死体を見つけたこと。その中に、若い乙女……リヤトニコフ……の陵辱された死体があったこと。 宝石類に興味を持たぬ赤軍が、それを持ち主の下腹部に撃ち込んでいたこと。 臓腑の中から宝石を取り出し、血も拭かぬままに持っていること……。
初出:「新青年」博文館 1928(昭和3)年10月
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| ● | 犬の王様 |
| 作者:夢野久作 ジャンル:童話
どれほど勧められても妃を娶らす、一匹の犬を「息子」と呼んでかわいがる王様がいた。 病を得た王様は忠臣達に「息子を王に」と言い遺し崩御。 家臣達は摂政を立てた上で犬を王とした。 即位の儀式に集まった国民の中に、猫を連れた老婆がいた。 玉座にいた犬の王様はその猫を見るや玉座を飛び降り、吠えながら逃げる猫を追い、城から出て行ってしまった。 重臣達が慌てて追いかけると、犬は山奥の洞窟に入っていった。 洞窟の中には貴婦人と立派な若者がいて……。 初出:「九州日報」1922(大正11)年12月
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| ● | 雪の女王 七つのお話でできているおとぎ物語 |
| 作家名:ハンス・クリスティアン・アンデルセン 翻訳者名:楠山正雄
1話:悪魔が良い物は醜く、良くない物は美しく写る鏡を作る。慢心した悪魔達がそれで神や御使いを映そうと天界に向かうと、鏡は割れて四散する 2話:ある国にすむ優しい男の子カイと気丈な女の子ゲルダは、きょうだいのような仲良し。 ある日、悪魔の作った鏡の欠片がカイの目に刺さり、カイの心は歪んでしまう。 冬が訪れ、一人でそり遊びをしていたカイは、雪の女王にさらわれ、家族のこともゲルダのことも忘れてしまった。 3話:村の人々はカイが川に落ちて死んでしまったと思いこんだ。しかしゲルダは春の太陽や川の水に教えられ、カイが生きていると悟る。 小舟に助けられて川を下ったゲルダは、一人暮らしの寂しい魔女に悪意のない魔法をかけられ、カイのことを忘れかけてしまう。しかし花々の声を聞くうちに心を取り戻し、再びカイを探す旅を始める。 4話:烏に「カイに似た子供が王女さまのところにいる」と聞いたゲルダは、烏と一緒にお城に向かうが、そこにいたのはカイに少しだけ似たところのある別人の王子だった。 5話:旅を続けるゲルダは森の中で追いはぎに襲われた。危うく殺されそうになるが、女頭目の娘に気に入られ、トナカイを一頭貰ってその背に乗って旅を続ける。 6話:ラップランドの女やフィンランドの女から「カイは雪の女王の城にいる」と教えられたゲルダ。 フィンランドの女に「カイの身体から鏡の欠片を取り出す」ように言われるが、途中、雪の大軍に襲われる。一心に祈り、天使の軍勢に助けられた彼女は、雪の女王の城へ向かう。 7話:雪の女王の城で絵合わせをするカイだったが、悪魔の鏡の欠片の所為で、それを正しく並べることができないでいた。 たどり着いたゲルダが凍り付いたカイの身体に抱きつき、祈りながら涙を流すと、カイの心と体は融け、鏡の欠片も外れる。 心を取り戻したカイは絵あわせを正しく揃え、ゲルダと共に女王の城から抜け出す。 ラップランドの女に別れを告げ、追いはぎの娘から優しい烏の話を伝え聞き、春の訪れる故郷に向かって歩き続ける……。
底本:「新訳アンデルセン童話集 第二巻」同和春秋社 1955(昭和30)年7月15日初版発行
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| ● | 老いたる素戔嗚尊 |
| 作家名: 芥川 竜之介 日本神話の「オオクニヌシの根の国訪問」のエピソードを、スサノオノミコトの視点で描いた作品。 大蛇退治をなした素戔嗚尊は櫛名田姫を妻とし、部族の長として心安らかな日々を送っていた。 二人の間には、母親に似た優しい息子の八島士奴美と、父親に似た気丈な娘の須世理姫ができた。 やがて櫛名田姫が病を得て没すると、悲しみにくれる素戔嗚は長の位を八島士奴美に譲り、幼い須世理姫を連れて海の向こうへ移り住む。 更に時が流れ、素戔嗚の悲しみが癒えつつあった頃、須世理は母親の櫛名田の面影を残す美しい娘となっていた。 ある日、須世理は葦原醜男という若者を素戔嗚のまえに連れてきた。 須世理と醜男とが仲睦まじげであるのを見た素戔嗚の心中に、若き日の荒い気性が甦ってきた。 彼は醜男の命を奪うために、様々な難題を与えた。そして……。 初出: 「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1920(大正9)年3〜6月
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| ● | 結婚難並びに恋愛難 |
| 作家名: 芥川 竜之介 アラビアの王女ゼライイドはたぐいまれな美女であり、知性にも富んでいた。 年頃となった王女には二百八十人もの花婿候補があったが、どれも彼女の眼鏡には適わない。 王宮の奥深くで侍女達に囲まれて過ごす王女であっても、しかしとうとう「恋愛」に捕らえられる日が訪れた。 ある夜、彼女は恋しい男と手に手を取って出奔した。その恋人とは……。 初出: 「婦人の国」1925(大正14)年7月
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| ● | お月様の唄 |
| 著者:豊島与志雄
昔々。ある国の八つになる王子様は、月の晩になるとお城の裏の森の妖精に連れられて、千草姫という白樫森の女王の元へ遊びに行っておりました。 森の精達は元々は野原に住んでいたのですが、野原が開墾され田畑となったため、仕方なく森に隠れ住むようになったといいます。 千草姫と森の精達が夏の日照りのことや秋の洪水のことを予言してくれるので、王子様はそれを父王様に告げました。 半信半疑の王様でしたが、それでも災害に備えを調えておいたところ、確かに日照りや洪水が起きました。 備えのおかげで田畑は無事であったので、王様も国の人々も、王子様は神の子かも知れないと思うようになりました。 災害を乗り越えた国はだんだん豊かになってきたので、新しい家を建てるための材木や、田畑を開く土地が必要になりました。 そこで、白樫の森の木を材木にし、その跡を畑にしてしまうという計画が持ち上がったのです……。 底本: 豊島与志雄童話集
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| ● | 三つの宝 |
| 作家名:芥川 竜之介 初出:「良婦之友」1922(大正11)年2月
シナリオ形式の作品。 ある森の中。ずるがしこい盗人達が王子を欺く。 人の良い王子は、ぼろのマントとなまくら剣と穴あきブーツを「姿を消すマント」「鉄をも切り裂く名刀」「千里を跳ぶ靴」の三つの宝だと思いむ。 ある国で王との婚礼を良しとしない姫が捕らえられていると聞いた王子は、三つの宝の力で姫を助け出そうと王城へ向かった。 ぼろぼろのマントの御蔭で下男と間違われ、侵入者と思われずに済んだ王子は、あっけなく王女の元にたどり着いた。 そこに現れた黒人王は、本物の三つの宝を持っていた。 自分のブーツは偽物かもしれぬが、王女といれば千里を舞うのと同じ事、と言い切る王子。 怒った王がマントで姿を消せば、王女と王子は嫌いな王の姿が見えぬ事をむしろ喜んでみせる。 王はついに名刀を抜き、王の刀が王子の刀を叩き折る。 しかし王子をかばう王女を傷つけられぬと、王は剣を投げ捨てた。 王は本心から王女を愛していた。しかしやり方を間違えていたという彼に、王子も自分も考え違いをしていたと応じる。 王は王女を解放し、故郷へ戻る決心をする。 そして王子と王女は「悪魔のような王や魔法の道具を持った王子など、おとぎ話の中だけのこと」と悟り、醜く美しい、もっと広い世界に旅立つことを宣言するのだった。
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| ● | 瓜子姫子 |
| 作者:楠山正雄
老夫婦が河から拾ってきた大きな瓜から、可愛らしい女の子が生まれた。 子供のない老夫婦は女の子に「瓜子姫子」と名付け、育てる。 やがて機織りの匠になった瓜子姫子の元に「あまんじゃく」が現れ、言葉巧みに彼女を裏山に連れ出し、柿の木の高見に縛り付けてしまう。 姫子の着物を奪って着込んだあまんじゃくは、まんまと老夫婦を欺いて姫子になりすます。 可愛らしい上に織物上手の姫子の噂を聞いたお城の奥方様は、一度姫子に会いたいと、使者を老夫婦の元に送る。 姫子になりすましたあまんじゃくを乗せた駕篭が裏山の柿の木の下を通ったとき、使者の侍が本物の姫子の存在に気付いた。 姫子は助けられ、あまんじゃくは打ち首にされた。 その時、近くの黍の畑にあまんじゃくの血が飛び散ったので、以来黍の殻は赤い色となったという。
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| ● | 燕と王子 |
| 著者名:有島 武郎
オスカー・ワイルドの「幸福な王子」(The Happy Prince)の翻案。 王子と燕の最期の部分に原典との大きな違いがある。
初出:「婦人の国」1926(大正15)年4月
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| ● | 殺生石 |
| 作者:楠山正雄 徳高い玄翁和尚という御坊が、下野国の那須野の原を通りかかった折のこと。 草原の真ん中に、一の背丈ほどの滑らかな石が立っていた。 夜も暮れていたため、和尚はこの石の傍らで休むことにした。 その枕元にひとりの女の影が立つ。 女は「この石の精」であると言い、元をたどれば天竺の九尾の狐が化身したものであったと語る。 曰く、 天羅国に災いを起こして王の命を奪い、殷の紂王の后(妲己)となって国を滅ぼした。 日本へ渡って玉藻前を名乗って鳥羽上皇に仕え、この国も滅ぼそうとしたが、陰陽師に見破られてこの地で死んだ。しかし怨念は石となって残った。 石の側による者は人も獣も毒気に当たって死ぬので、殺生石と呼ばれるようになったが、御坊は寄っても災いを受けることがない。 きっと徳の高い方であろうから、どうか我が身を救ってほしい……。
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| ● | 奉教人の死 |
| 作者 芥川龍之介 ある年の御降誕(クリスマス)の夜、長崎のキリスト教会「さんた・るちや」の前に一人の少年「ろおれんぞ」が行き倒れていた。 「生まれは天国、父はデウス」と言って笑う天涯孤独の少年は、女の子のようにかわいらしく、また信心深いので、信者達は天からの授かりものと慈しみ育てた。 ことさら武士の出で「悪魔をも挫がうず大男」の「しめおん」は、「ろおれんぞ」を弟のようにかわいがっていた。 数年後、信者の傘張の娘が「ろおれんぞ」に恋をしたが、「ろおれんぞ」は意にも介さない。 すると娘は長老達の前で「身籠もっていて、父親は『ろうれんぞ』だ」と告げる。 「ろうれんぞ」は否定するが、信者達もそして兄と慕う「しめおん」も彼が不義をはたらいたと責め、皆は破門を宣告する。 「ろうれんぞ」は教会を去り、傘張の娘は女の赤子を生む。 「しめおん」は去ってしまった「ろおれんぞ」の顔立ちを赤子の中に思い起こしてかわいがったが、娘はそれを快く思っていなかった。 一年ほど後、長崎は大火に見舞われ、傘張の娘の赤子は火炎の中に巻き込まれてしまった。 取り残された赤子を救いに飛び込んだのは「ろおれんぞ」だった。 家が崩れ落ちる中「ろおれんぞ」は赤子を娘に投げ渡すが、自らは逃げ遅れる。 「しめおん」によってようやく救い出された「ろおれんぞ」だったが、全身が焼け爛れ、すでに虫の息だった。 懸命に看病する「しめおん」は、その中で「ろおれんぞ」が娘の恋慕を受け入れなかった理由、そして赤子の父親であるはずがない証拠を見ることとなる……。
初出: 「三田文学」1918(大正7)年9月
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| ● | 一寸法師 |
| 作家名: 楠山 正雄 摂津国に住む夫婦には子供がなかった。 住吉明神に「指ほどの小さな子でもよいから授けてほしい」と願をかけると、やがて本当に指ほどの大きさの子を授かった。 一寸法師と名付けられた子は、夫婦に大切に育てられたが、いつまで経っても背が伸びなかった。 十六になった法師は、立身出世のために京に上ることとした。 縫い針の刀、麦藁の鞘、お椀の船に箸の櫂。 住吉の浜から淀川を上り、鳥羽から京へとたどり着いた法師は、三条の宰相の屋敷で働くこととなった。 三条の宰相の十三になる姫は法師をいたく気に入って、どこに行くにも共をさせた。 ある日、些細なことから姫は屋敷から追い出されることになり、法師も姫と一緒に船に乗った。 ところが折悪しく時化に遭い、船は鬼の住む島へ流された。 鬼は小さな法師を侮って、つまみ上げると、一のみに飲み込んでしまった……。
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| ● | 湖水の鐘 |
| 作者 鈴木三重吉 山奥の村近くの湖に妖女(妖精)の王とその娘達が棲んでいた。 妖女(妖精)たちは、湖の畔に建つ礼拝堂で日に三度鳴らされる鐘の音を苦手としていた。 妖精の王は策をこらしてこの鐘を湖に沈めたうえ、取り返そうとする村人達の魂を奪い、体を湖深く沈めてしまう。 村人達は鐘を作り直したが、妖精の力のためにこの鐘は音を出すことができなかった。 時が過ぎ、一人の牛飼いの若者が妖精の王女と出会い、これを妻とした。 湖から出た妻は人間と変わらない姿をしていたが、年をとらなかった。 牛飼いと妻との間に男の子が生まれ、やがて立派な若者へと成長した。 その頃村は日照りが続き、井戸も枯れ果ててしまったが、湖の水は減るどころか逆に溢れ出し、村が水没しかねない被害を受けた。 牛飼いの妻は息子に「これはおまえの祖父である湖の妖精の王の仕業。湖の底の水晶の宮殿へ行くように」と告げる。 牛飼いの息子はマルメロの枝を一本持ち、水晶の宮殿へ向かった……。
初出:「湖水の鐘 世界童話集第六編」春陽堂 1918(大正7)年1月
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| ● | 黄金鳥 |
| 作者 鈴木三重吉 貧しい農家に子供が生まれたが、名付け親が見つからない。 物乞いにやってきた老人がその役を買って出、子供にウイリイという名を付ける。そしてさびた鍵を一つ与えると、ウイリイが14歳になるまでしまっておくように告げて姿を消した。 ウイリイが14になると、家の前に美しい家が忽然と現れる。 件のさびた鍵で戸口を開けると、そこには彼の為にあつらえたように立派な服と、鞍を乗せた小さな灰色の馬が一頭いた。 ウイリイが馬に乗り、旅立つと、馬は人の言葉をしゃべり出した。 旅路に黄金に光る三枚の羽根を見つけたウイリイ。馬は「拾うと大変なことになる」と止めるが、彼はは羽根を拾い集める。 その羽根を並べると、そこに美しい女性の顔が描かれていた。 やがてウイリイは大きな城の馬丁となるが、夜になると羽根に描かれた女性の姿を書き写すことに熱中した。 その絵が王の手に渡り、彼は王の前に引き出された。 年老いた王に曰く「これは間違いなく自分が略奪しようとしたがかなえられなかった王女の姿である。お前がその姿を描けるならば、その居所を知っているはずだ。彼女を連れてこられないなら処刑する」 落胆するウイリイに灰色の馬は「それは羽根を拾った祟り。私に任せれば良くしてさしあげます」と、王に巨大船を建造させよと言った……。
初出:「世界童話集 第一編『黄金鳥』」春陽堂 1917(大正6)年4月
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| ● | 夜長姫と耳男 |
| 作者 坂口安吾 兎のように上に長い耳を持つ耳男は、師匠の名代で「夜長の長者」の仕事を請け負うことになった。 長者には一粒種の娘「夜長姫」がいた。美しい姫の顔を見つめるうち、耳男の心には不可解な混乱が生まれた。 長者はヒメの守り本尊を彫る仕事を何人かに競わせ、最も優れた者には褒美として美しい機織り奴隷の娘エナコをやると言う。 耳男はエナコを哀れとは思うが貰う気はまるでない。それがエナコの疳に障ったのか、彼女は唐突に耳男の大きな耳を切り落とした。 片耳を落とされたことを「虫に咬まれたこと」と言う耳男に対し、夜長姫は無邪気で明るい「虫も殺さぬ」童女の笑顔を浮かべたまま、エナコに命じてもう片方を切り落とさせた。 夜長姫の笑顔に心を奪われてしまったことにおそれを感じた耳男は、仏像ではなくモノノケの像を造ることに魂を注ぎ込んだ。 三年かけてついに完成させたモノノケの像は、「耳の長い何ものかの顔」をした「ヒメの笑顔を押し返すだけの力のこもった怖ろしい物」で……。
初出:「新潮 第四九巻第六号」 1952(昭和27)年6月1日発行
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| ● | 旅なかま |
| 作者 ハンス・クリスティアン・アンデルセン 翻訳者 楠山 正雄
孝行者のヨハンネスが不思議な夢を見た夜、病の床にあった父が没した。 弔いを済ませた彼は、死者に無礼をはたらく者たちになけなしの金を渡し、その死者をも手厚く葬る。 無一文で旅にを続ける彼に、見知らぬ男が声を掛け、旅の道連れとなる。 旅を続ける内に二人は立派な城の城下町にたどり着く。 城の姫が夢に出てきた娘とそっくりであることに気付いたヨハンネスはその婿になることを望む。しかし実は姫は恐ろしい魔女であり、花婿候補はことごとく殺されていた。 それでも姫との結婚を願うヨハンネス。旅仲間の男は彼に酒を飲ませて眠らせると、宿屋の窓から外に出て行き……。
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| ● | 野のはくちょう |
| 作者 ハンス・クリスティアン・アンデルセン 翻訳者 楠山 正雄 11人の王子と1人の姫の父王が新しく妃を迎えたが、彼女は子供達を嫌っていた。 姫を悪様にいって王と王城から遠ざけさせると、王子達を呪って白鳥に変化させた。 成長した姫は、兄王子達の呪いを解く術は刺草で帷子を編み、着せることことと知る。しかも、帷子を編む間は一言も口をきいてはならない。 手指を血まみれにし無言で刺草を編み続ける姫を魔女と思いこんだ高僧は、彼女を火あぶりしようとする……。 別訳タイトル「白鳥の王子」
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| ● | 猫吉親方 |
| 作者 シャルル ペロー 翻訳者 楠山 正雄
貧しい粉引きの三男坊。遺産に貰ったは、粉引き小屋の鼠番猫の猫吉親方ただ一匹。 悲嘆にくれる三男坊に猫吉夫館が言うことには 「袋を一つ、長靴を一足こしらえてください。きっとだんなをしあわせにしてあげます」 末息子から貰った長靴を履き、袋を背負った猫吉親方。 王様に取り入り、農夫を言いくるめ、人食い鬼を騙し、とうとう末息子を大侯爵に仕立て上げた。 いわゆる「長靴をはいた猫」。 底本:「世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの」小峰書店 1950(昭和25)年5月1日発行
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| ● | 人魚のひいさま |
| 作者 ハンス・クリスティアン・アンデルセン 翻訳者 楠山 正雄
人魚の王の末のひいさま(姫様)は、六人姉妹の内で一番の器量好し。 祖母の語る海上の世界……人間達の暮らし……を聞く内に、その世界にあこがれを抱くようになる。 十五の祝いに海面へ向かうことを許されたひいさまが見たのは立派な船、そして美しい王子の姿。 嵐で難破した船から王子を助けたひいさまは、王子に恋焦がれる。 美声を代償として人の脚を手に入れたひいさまは王子の暮らす国へ向かった……。 底本:「新訳アンデルセン童話集第一巻」同和春秋社 1955(昭和30)年7月20日初版発行
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| ● | 眠る森のお姫さま |
| 作者 シャルル ペロー 翻訳者 楠山 正雄
老いた国王夫妻が漸く娘を授かった。 名付け親として国中から7人の妖女(魔女)たちが集められ、口々に姫を祝福する。 ところが呼ばれなかった8人目の老妖女が晩餐の席に現れ、姫姫は糸車の「つむ」に刺されて死ぬと呪う。 7人目の若い妖女がそれを打ち消す言葉を言い、その場は収まったが、呪いを恐れた国王夫妻は、国中の糸車とつむを壊させた。 美しく成長した姫は、ある日城の塔の上で糸を紡ぐ老婆と出逢う。
底本:「世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの」小峰書店 1950(昭和25)年5月1日発行
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| ● | 灰だらけ姫(サンドリヨン) |
| 作者 シャルル ペロー 翻訳者 楠山 正雄
裕福な紳士の後妻は、前妻との間の娘と折り合いが悪い。 メイドのように扱われる娘は釜戸の前で眠る日々が続き、義理の姉達から灰だらけ娘・サンドリヨン(シンデレラ)と揶揄される。 お城で舞踏会が開かれ、姉たちは着飾って出席するが、サンドリヨンは着る物もなく泣き伏す。 その場にサンドリヨンの名付け親(実は魔女)が現れて……。
底本:「世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの」小峰書店 1950(昭和25)年5月1日発行
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| ● | ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣) |
| 作者 ガブリエル=シュザンヌ・バルボ ド・ヴィルヌーヴ(底本による。しかし内容をみるとジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン版か) 翻訳者 楠山正雄
裕福な商人の末娘はその美しさから「ラ・ベル(美し姫)」と呼ばれていた。 だが商人は事業に失敗し破産。一家は田舎に移り住む。商人は事業の整理に町へ行くことになり、末娘は土産として薔薇を一輪所望する。 商人が町から戻る道すがら、無人の屋敷の庭で薔薇を手折ると、屋敷の主であるラ・ベート(野獣)の怒りを買う。 野獣は商人かその娘の命を差し出せと命じ、他の家族が暮らせるだけの財宝を渡して返す。 末娘ラ・ベルは父の命を助ける為に自ら野獣の屋敷へ。彼を嫌悪しながらも、平穏な日々を送る。 ある日、末娘は父が重い病にかかっていることを知り、里帰りを願い出る。 野獣は一週間の期限を切ってそれを許し……。
底本:「世界おとぎ文庫(イギリス・フランス童話篇)妖女のおくりもの」小峰書店 1950(昭和25)年5月1日発行 |
| ● | 小公女 |
| 作者 フランシス・ホジソン・エリザ バーネット 翻訳者 菊池寛
裕福な家庭に生まれたセエラ・クルウは父と二人でインドに暮らしていたが、7歳の時に母国英国に戻り、寄宿学校に入学。 裕福で美しく賢いセエラは、あっという間に学校中の人気者となった。しかし、父は事業に失敗し、客死。セエラは地位と財産を失う。 貧しくなった途端に掌を返したかのごとく冷たく当る大人達。 学校を退学になったセエラは、メイドとして寄宿舎の屋根裏に暮らすこととなった。 同年代のメイドやセエラを慕う少女達に支えられ、セエラは辛く苦しい日々を耐える。 やがて学校の近くにインド人の紳士が引っ越して来る。紳士は名も知らぬ貧しい娘を影ながら応援する。 病に倒れた紳士を見舞ったセエラは、この紳士が亡き父の共同経営者であることを知る。 紳士もまた、セエラが友人の娘であることを知り、歓喜する。 父の事業は失敗しては居なかったのだ。 こうして貧困から救い出されたセエラは、紳士と共にインドへ渡ることとなった。
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| ● | 白雪姫 |
| 作者:グリム兄弟 (ヤーコプ・ルードヴィッヒ・カール ヴィルヘルム・カール)
雪のように白い肌、黒檀の黒髪、深紅の唇を持って生まれた姫は、白雪と名付けられた。 白雪の実母の死後に父王の後添えに入った妃は、自分の美しさに絶対の自信を持っていた。 彼女は不思議な鏡に訊ねる……「世界で一番美しいのは誰?」 鏡は答える……「あなたこそ、お国でいちばんうつくしい」 しかし白雪が成長すると、鏡の答えは変わってゆく……「ここでは、あなたがいちばん。けれども、白雪姫はもっと美しい」 妃の嫉妬はふくれ、やがて継子を殺める決心をした。 そうとは知らない白雪は妃の命ずるままに狩人と共に森へ出かけた。
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| ● | ラプンツェル |
| 作者:グリム兄弟 (ヤーコプ・ルードヴィッヒ・カール ヴィルヘルム・カール)
子を宿した妻が、隣家の魔女が育てるラプンツェル(レタス)を無性に食べたくなった。 夫は魔女に「生まれた子を養子に出す」約束と引き替えに妻の願いを叶えた。 魔女の養女となり、ラプンツェルと名付けられた娘は、高い塔に閉じこめられて育つ。 その美しい歌声と長い金髪に魅せられた王子が彼女の元に忍んでくるようになったが……。
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| ● | 西湖主 |
| 作者:田中貢太郎 不思議な宮殿の庭に迷いこんだ男・陳は、公主(姫)と呼ばれている美少女の姿を覗き見る。 彼女の落とした「ひれ」に、陳はその美しさを讃える詩を書き付けた。 しかしその行為は姫の持ち物を汚すことと、公主の母妃は怒り、陳を処刑しようとするのだが……。
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| ● | 荷花公主 |
| 作者:田中貢太郎 秀才・彭は縁あって可憐な荷(蓮)の花精と結婚する。 彭が一人故郷に帰り戻ってくると、妻の様子が以前とは変わっていた。 訝しむ彭の身体は、やがてみるみるやつれてゆき……。
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| ● | ろまん燈籠 |
| 作者:太宰治 入江家の人々は揃いもそろって変わり者。 彼らの楽しみは、皆で一つの物語を連作すること。 その日は末弟が物語を造り始める事となったが、どうにも良い案が浮かばない。 そこで彼は、「アンデルセン童話集、グリム物語、ホオムズの冒険などを読み漁(あさ)っ」て、そこから剽窃することにした。 その物語の尻を次女が接ぎ、母親が接ぎ、長女が接ぎ、長兄が接ぎ……そして、醜い魔女と美しい娘ラプンツェル、そして王子の、継ぎ接ぎな物語が完成した。
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| ● | 大江山 |
| 作者:楠山正雄 日本の昔話。 源頼光に天皇より酒天童子退治の命が下る。 頼光は優れた四人の部下「四天王」と無二の友・平井保昌を引き連れて鬼の済む大江山へ向かう。 鬼に捕らえられた人々の中には、池田中納言の姫もいた。
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| ● | 巨男の話 |
| 作者:新美南吉 魔女を母に持つ大男。 ある日母親がお姫様と侍女に魔法をかける。 姫は白鳥に、侍女達は黒い鳥に姿を変えられてしまった。 魔女の死の間際、大男は鳥にされた人々を人に戻す術を聞き出して……。
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| ● | アラジンとふしぎなランプ |
| 作者:菊池寛 有名な中東の昔話「アラビアンナイト」の一節。 仕立て屋の息子アラジンはひどい怠け者。 彼の前に叔父を名乗る男が現れ、不思議な地下室からランプを取ってくるように命じ、魔法の指輪を渡す。 指輪の精霊の力添えでランプを得たアラジンは……。
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| ● | 世界怪談名作集 鏡中の美女 |
| 作家名: George MacDonald(ジョージ マクドナルド) 岡本綺堂訳 貧乏貴族の子弟コスモの身に降りかかった恐怖の物語。 古道具屋で見つけた古びた鏡に惹かれたコスモ。 その鏡に全身に白い物をまとっている婦人の美しい姿があらわれた。
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| ● | ラマ塔の秘密 |
| 作家名: 宮原晃一郎 戦前・戦中の中国大陸を舞台にした、児童向け冒険活劇。 おてんばな満州族の姫ニナールと、気の弱い蒙古族の王子ジウラは、肝試しとして古いラマ教の寺院に行きました。 そこは馬賊の根城となっており、ジウラは人質にとられてしまいます。
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| ● | たにしの出世 |
| 作家名: 楠山 正雄 昔々あるところに土地持ちの長者と、長者から土地を借りている貧しい百姓の夫婦がおりました。 跡継ぎのない百姓の夫婦は、「かえるの子でもたにしの子でも構わないから、子供を授けてくれ」と水神に願をかけました。 すると、百姓のかみさんはほんとうにたにしの子供を産んだのです。 姿は「たにし」でも水神さまの申し子だというので、百姓夫婦はその子を大切に育てました。 数年経ってその子は「たにし」の姿のままでしたが、ある日突然人の言葉を喋りました。 言葉をしゃべるたにしを珍しがった長者は、これを家宝にしようと策を講じ、そのために「娘の婿に」とたにしに持ちかけました。 するとたにしが本気にしたので、仕方なく下の娘の婿にすることにしました。 下の娘とたにしの婿は仲がよく、二人そろって出かけるときは、娘は婿を自分の帯の間に挟んで出かけました。 ある日連れだって出かけた二人でしたが、娘がたにしの婿を帯からおろして水神様にお参りしているわずかな間に、婿の姿が見えなくなってしまいました。 娘は自分の着物が汚れるのも構わず、田んぼの中まで婿を探して回りました……。
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| ● | 葛の葉狐 |
| 作家名: 楠山 正雄 摂津の国の侍、阿部保名は、先祖が残した膨大な蔵書が朽ちてゆくのに、己にそれを解読する学力がないことを悲しみ、和泉国の信田の森の明神に「学問に秀でた子がほしい」と願をかける。 ある年の秋、保名は家臣達をつれて参詣した帰りに、狐狩りの武士達に追われていた一匹の牝狐を助ける。 それを恨みに思った武士達の主の悪右衛門が、保名主従を捕らえ、殺そうとした。 悪右衛門は妻の病を治すためには狐の生き肝を煎じて飲ませろと弟の芦屋道満に言われ、狐狩りをしていたのだった。 そこに現れた和尚が「病を治そうと言うときに、人の命を奪ってはいけない」との説得に悪右衛門が応じて去る。 実は和尚は先ほどの狐の化身だった。 命拾いをした保名だったが、受けた傷は、屋敷に帰ることができぬほどに重かった。 山中で出会った美しい娘が彼を哀れんで家に運び、親身に手当をしてくれた。 体は中々治らず、時ばかりが過ぎる中、保名と娘との間に男の子が生まれて……。
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| ● | 三輪の麻糸 |
| 作家名: : 楠山 正雄 日本神話より、大物主命と大和国の活玉依姫の逸話。
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| ● | ルンペルシュチルツヒェン |
| 作家名: グリム兄弟 翻訳者: 楠山 正雄 農夫が「自分の娘はわらを金に変えられる」と王に自慢する。 王は娘にわらを金に変えるよう命じる。 途方に暮れた娘の前に小人が現れ、わらを金に変える。 王の妻となった娘に対し、件の小人は「自分の名前を言い当てられないなら初子をよこせ」と迫る。 娘は知恵を絞って小人の名前を言い当てる。 底本: 世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人 出版社: 小峰書店 初版発行日: 1949(昭和24)年2月20日 |
| ● | かえるの王さま |
| グリム兄弟著 楠山正雄訳 金のボールで独り遊びをしていたある国の末の姫は池にボールを落としてしまう。 ボールを拾ってくれたカエルと安易な約束をし、それを反故にしようとした姫だったが、父王から約束を守るように咎めらる。 姫が嫌々約束を果たすと、カエルは魔法使いにかけられていたのろいが解け、美しい王子に戻る。 王子は末の姫を故国に連れ帰って妻とした。 底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店 1949(昭和24)年2月20日初版発行
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| ● | イワンの馬鹿 |
| 作家名: トルストイ 翻訳者: 菊池 寛 ロシアの文豪による寓話。 愚直なイワンは、その愚直さ故に姫の婿に選ばれ、やがて王となる。 イワンの兄たちを堕落・没落させた悪魔は、彼をも没落させようと知恵を絞るが、彼と彼の妹や妻、そして国民達の愚直さに負けて消滅する。 底本: 小學生全集第十七卷 外国文藝童話集上卷 出版社: 興文社、文藝春秋社 初版発行日: 1928(昭和3)年12月25日 |
| ● | 六の宮の姫君 |
| 作家名: 芥川 竜之介 今昔物語から採った男と女の物語を、芥川龍之介が哲学的に小説化。 父母を頼りに、その父母を失ったあとは言い寄ってきた優しい男を頼りに生きる、六の宮のほとりに住む姫君。 やがて男は遠い任国へ。地獄も極楽も知らないその人生が終わりを迎えるとき……。 初出: 「表現」1922(大正11)年8月
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| ● | シンデレラ |
| フランスのシャルル・ペロー(1628-1703)が著した『昔話、およびその教訓』所収「サンドリヨン」の英訳版「シンデレラ」をもとに、水谷まさるが自由に再話した翻案作品。 底本: 「世界名作物語」少女倶樂部第十五卷第六號附録 出版社: 大日本雄辯會講談社 初版発行日: 1937(昭和12)年6月1日 |
| ● | オシャベリ姫 |
| かぐつちみどり(夢野久作)作の童話。 たいそう美しいが、生まれついてお喋りなお姫様「オシャベリ姫」 見た夢のハナシを本当のことのように話すので、お怒りになったお父様は姫をお城の石牢に閉じこめてしまいましした。 寂しい石牢の中で泣くウチに、姫はやがてうとうとと眠ってしまい…… 初出: 「九州日報」1925(大正14)年9〜10月
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